
「くまと人間」
作 どらぽん
くまがいまして、お腹を空かせていました。
川の岸に行って、魚を食べようと、くまはばしゃばしゃ、
川の中で魚を捕まえようとがんばりました。
けれども、魚は一尾も捕まえられませんでした。

いえ、捕まえられないのではなく、魚が一尾も
いないのです。
「いない! 魚が一尾も! 」
くまは、おどろきました。冬眠から覚めて、
野山をかけめぐり、いつもの年なら、エサで、
満ちあふれているはずです。
ところが、魚も木の実も、わらびもぜんまいふきのとう、
などの山菜すらも、なにもない!
どうしたんだと、お腹を空かせて、人間のいる里に下りてしまいました。
「くまだ! くまがでたぞ」
にんげんたちは、おおわらわで、くまを殺そうと、
銃で撃ちました。くまは逃げ出しました。
くまは殺されたら、かなわんと、逃げまくりました。
逃げながらも、何か食い物はと思って、畑にある作物を食べて、
うえをしのぎました。
どうしたんだ、どうして食い物がない。野山から食い物が
なくなったんだ!
くまは泣き叫びたくてたまらなくて、吠え声をだしたところで、
ばーん! と銃に撃たれて、殺されました。
「いあ。最近くまがでるときいて、怖くてね。ニュースにもなってたね」
「くまがでたんだ」
「くま、こわいね」
野山に地球温暖化の影響で、環境の変化によるくまの食べるものが、
激減し・・。
などと、ニュースでは言いますが、野生の生き物に、何もわかりません。
くまは、くまとして当たり前に食べ物がほしい。ただそれだけです。
人間もいます。くまみたいな人間です。職がなくて、食事もとれません。
まったくのくま人間で、仕事もなくて、お金もない、食事もない。
そんな、くま人間が、毎日を過ごすうち、つい魔が差して、犯罪に手を染める。
悪いことをするやつに、同情はいりません。
けれど、仕事もない、お金がない、食べものがない。
くまと同じく。
産業構造の変化に伴い、労働環境の変化に労働者には適応できないものも出始め、社会には失業者があふれている・・。
そんな社会はいやだな。
くまも人間も、社会なのか地球なのか、どちらに属するのか?
何も悪いことしてなくても、悪人呼ばわりされて、
(かわいそう)
と、いってみたかっただけ。
同情じゃないの!
本気で思う。
(かわいそう)
おしまい
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